カメラレンズ用性能評価装置の開発

電子光応用開発部 笠松 秀徳

 

 当センターは、光学設計、レンズ性能評価、光計測、光学薄膜等の基盤技術を幅広く所有しており、県内企業に対して光学に関する技術支援を実施しています。今回の報告では、当センターが保有するレンズ性能検査技術についてご紹介します。

MTF(Modulation Transfer Function )によるレンズ性能検査技術の開発

 伝統的なカメラレンズの性能検査は、図1のように、被検レンズを通してスクリーン上に投影したチャートの投影像を、検査員が目視で確認し製品の良否を判定するというものでした。

図1 目視検査の様子

 このような検査は定性的なものであるため、検査員の熟練度や感性によって検査結果が変わりやすいという問題が発生します。

 そのため、近年は定量的な値であるMTF(Modulation Transfer Function )でレンズ性能を表すことが多くなっています。MTFは図2のように被写体の持つコントラストが像面上でどの程度まで再現されているのかを表すものです。被写体のパターンが細かくなっても、コントラストの再現度が高いレンズを良いレンズと判定します。

 

    

図2 MTF値について

図3 当センターのMTF測定装置(市販)

 MTF測定装置は市販品(図3)もありますが、当センターでは独自に簡易型MTF測定システム(図4)を開発しました。この簡易型MTF測定システムは、撮影したチャート写真から画像処理プログラムでMTFを取得するものです。市販のMTF測定装置と比較して、写真を撮るだけで手軽に素早くMTFを取得でき、小型で安価なことが特徴です。

図4 簡易型MTF測定システム

 MTFはレンズ性能を表す指標でしかなく、実際に品質検査で用いるにはMTFによる合否の基準値を設定する必要があります。そのため、現在は解像力と比較しながらMTFによる基準値の検討を行っています。さらに開発が進めば、自動で連続測定可能な機構の設計やプログラムの改良を行う予定です。