先端機能素子開発部 木谷 貴則、黒澤 孝裕

ワイヤレス給電とは
 通常、電子機器への給電やバッテリーを充電するためには、電源ケーブルやコネクタ接続、金属接点を通じて電力を送ります。ワイヤレス給電は、送電コイルに高周波電流を流すことで送電コイルと受電コイルの電磁誘導を利用して、コネクタや金属接点などを介さずに「電子機器」や「二次電池」に非接触で電力を伝送する技術です(図1)。例えば、一部の最新スマートフォンには、ワイヤレス給電が搭載されており、スマートフォンを充電パットの上に置くだけで充電することができます。
 本技術はメリットとして以下のことが挙げられます。
電源ケーブルレス: 利便性・操作性の向上、置くだけ充電
表面電極レス: 電極の腐食・接点不良、感電・漏電の防止
1フレーム構造: 筐体強化、防水・防塵性、デザイン性の向上
一次電池を二次電池に置換: 電池交換不要、省資源化、電池容量増大
密閉部・可動部への給電: タンク・装置内、回転体のセンシング

設計から試作・評価まで一貫スピーディ開発
 弊センターでは、「電磁界解析」、「高周波回路設計・試作」、「計測評価」、「製品化支援」の4つのコア技術を基に、ワイヤレス給電の技術開発および製品化支援を行っています(図2)。コイル、磁気コア、送電/受電回路の設計から試作・評価までを一貫して行うことで、よりスピーディな技術開発に努めています。電磁界シミュレーション解析と開発したワイヤレス給電測定評価システム(図3)により、電気特性、伝送効率、伝送距離、コイル形状・サイズなど企業ニーズにマッチしたオリジナルなワイヤレス給電のシステムを提供しています。
 1つの例として、共振コンデンサなどの電子部品の小型化を図るために、MHz帯でのワイヤレス給電および伝送効率の向上を目指して、伝送信号波形の立ち上がりを急峻化したワイヤレス給電ドライバを開発しました。送電電圧は6V~25V、伝送周波数は30k~2MHzの範囲で可変でき、最大で50Wの送電を可能としました。
 ワイヤレス給電の基本性能は以下のとおりです。
【基本性能】
 受電電力: サブW~30W
 伝送周波数: 数十Hz~2MHz
 伝送距離: 数mm~十数cm(コイル径1/4)
 DC-DC総合伝送効率: 50~80%

応用事例
 これまでに、企業ニーズを基にワイヤレス給電で高速回転する電飾ゴマ(図4)、表面電極レスの携帯型水素水生成器(図5)など十数件のワイヤレス給電の技術開発を行ってきました。近年では、東北フジクラとフレキシブルプリント基板(FPC)を用いたコイルを共同開発し、防水機器用のワイヤレス充電モジュール(図6)やΦ12mmのセンシング向け超小型コイル(図7)を開発しました。超小型コイルでは、コイルの最適化設計、共振回路定数や伝送周波数の最適化により高効率伝送を実現し、受電電力1Wを可能としました。
 現在、本技術にご興味のある企業、ワイヤレス給電の新規応用先を探しています。何か御座いましたら、お気軽に御相談下さい。