素形材開発部  野辺 理恵

プラスチックの成形加工

 プラスチックの成形加工方法で最も多く使用されているのが「射出成形」で、「溶かす」、「流す」、「固める」の3つの工程に分けられます。初めに、プラスチックを加熱して溶かし、製品の形をした型(金型)に流し込みます(射出)。金型の温度はプラスチックが溶ける温度以下に設定しているため、金型内でプラスチックが冷却され固まります。近年、環境への配慮から石油由来であるプラスチック使用量の削減やさらなる軽量化が求められています。

樹脂を発泡させる新技術の導入

  射出成形の「溶かす」の工程で、高圧ガス(窒素または二酸化炭素)を注入して溶解し、「流す」工程でそのガスを気泡として発生させ、「固める」工程で内部に微細な孔のあるプラスチック製品を得る手法が開発されました(超臨界発泡射出成形)。超臨界発泡射出成形は、内部の孔による軽量化だけではなく、有毒ガスを発生する化学発泡剤を用いないことから、環境に優しい成形加工方法です。

セルロースナノファイバーとの出会い

 セルロースナノファイバーは、木材から得られるパルプ等を原料とし、ナノサイズ(1ナノメートルは10億分の1メートル)まで解きほぐした繊維です。一般的なセルロースナノファイバーのサイズは直径5~20 nm(ナノメートル)、長さが5 mm(マイクロメートル、1 mmは1,000 nm)以上とされています。セルロースナノファイバーは環境に優しい持続可能な資源、軽い、強いといった特徴があります。近年、環境に優しいプラスチックの補強材として、様々なプラスチックと混ぜる研究が進められています。

軽い・強い・環境に優しいプラスチックの成形加工技術

 当センターでは、プラスチックの中で最も使用されているポリプロピレンにセルロースナノファイバーを混ぜ、超臨界発泡射出成形を行うことで、従来のポリプロピレンより「軽い・強い・環境に優しいプラスチックの成形加工技術」を確立できました。セルロースナノファイバーを混ぜることで、ポリプロピレン使用量の10%削減と強度の向上を実現できました。さらに,超臨界発泡射出成形により、ポリプロピレンより「軽い・強い・環境に優しいプラスチック発泡体」を開発しました。今後は、企業の皆様へ開発した技術の成果普及を行っていきたいです。